2025年11月2日日曜日

11月に入り大山の森は落葉に包まれる


落葉がひっきりなしの中、雅子と昼飯をいただく。

興味深い記事を見たので記憶に残すために保存した。

CDT CHAMP des TREILLES 2022


2025年11月1日 日本経済新聞

米国に「暴力的衰退」の恐れ 歴史人口学者エマニュエル・トッド氏


社会の常識・良識を壊す保守ポピュリズムが世界を覆っている。その最たる例は、トランプ大統領を再選させた米国だ。歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は、その米国が「暴力的な衰退」を迎える可能性を予言する。そこへ至る道筋とは。宗教の消失、個人の空虚感、教育や産業、民主主義の退潮の力学を聞いた。


米製造業再生、壁はドル



米欧の政治・社会の混迷とその原因を掘り下げた「西洋の敗北」が出版されたのは2024年。その後、米国ではトランプ大統領が再選され混沌は深まっている。


――あなたは米貿易赤字を問題視するなど、トランプ氏と通じる主張もしていた。今の彼の政策をどうみるか。


「2016年のトランプ氏の当選を予想し、勝った時は好意的でないにせよ興味深く見ていた。米国が帝国的な地位から後退し、いわば巨大な国民国家になるとの立場は一般国民にとって理にかなうと思ったからだ」

「だが今やトランプ氏の矛盾も、政治や国民生活への悪影響も明らかだ。破壊への欲求を伴うニヒリズム(虚無主義)が米国を覆った。真実を攻撃し、科学を否定し、宗教をゆがめ、ウソや変節をあがめるヒトラー的な外交を展開している」



――トランプ氏は米製造業の復活を唱える。その行方をどうみるか。


「今や米国が輩出する技術者は人口が半分以下のロシアより少ない。この技術者の減少が米製造業衰退の背景で、教育や宗教の崩壊とも絡む」

「だが米国の状況を悪化させたのはドルの覇権だ。成功をめざす優秀な若者は自動車や航空機産業でなくドルが湧き出す魔法の泉に近い金融や法律分野で働く。当然技術者は不足し製造業の衰退は続く。問題は米産業が外国産業でなく自国のドルと競っている点だ」


「このドルの地位ゆえトランプ氏の経済政策は失敗する。関税が悪いとは思わないが、米国が産業システムと金融覇権の相克から抜け出すのは手遅れだ。産業基盤や技術者は足りないし、ドル覇権を放棄すれば製品を輸入する力を失い国民が生活に窮してしまう」


――通貨覇権が米製造業を損なうのを防ぐ方法はなかったのか。


「直感では不可避だったろう。方法があっても最強国の万能感のせいで明らかな問題や解決策に目が向かなくなる」

「ソ連の崩壊も西側の勝利だと誤解された。実際は崩壊に向かう米ソの両体制のうち、ソ連が先に崩壊しただけだ。だが勝ち誇った米国は2001年に中国を世界貿易機関(WTO)に迎え入れる自殺行為に出た」


「米貧困層の中核はもはや労働者ですらない。生産活動も行わずアジア製の安い製品を消費して生きつなぐ別の何かになった。古代ローマでエジプト産の穀物を配給されていた平民と同じだ」

「この状況が家族や社会、国に役立っているとの自尊心と幸福感を人々から奪い、自殺や薬物依存が深刻化した」


――米国は何度も衰退が予言されたが、1980年代のレーガン政権下で復活し、冷戦後は一極体制とも言われた。評価はまた振れるのでは。


「まだ米国への楽観論が強かった2003年の著書で、世界は米国が支配するには広すぎ、米経済力も実は強くはないと主張した。その後、多くの技術も誕生したが、米国の衰退は続く」


「米国の衰退は長期の傾向で、私の関心事はむしろ衰退が平和裏に起きるか暴力的になるかだ」


――現時点で、どちらだとみているのか。


「乱暴な崩壊しか予想しにくい。内戦の可能性が指摘され、大統領は国内の民主党系の都市に部隊を派遣している。政権が国内外を区別できなくなるのは帝国崩壊時の典型的な現象だ。米国が『敗北の帝国』となれば同盟国への支配と搾取を強める可能性があり、日本も注意が必要だ」



宗教の喪失、分断に拍車

西洋が敗北した根っこには、その勃興を支えたプロテスタント流の価値観・規範の衰退があるとトッド氏は説く。その余波は世界と日本の行方すら左右しうる。

――宗教が明確でない多くの日本人にとって、プロテスタント主義の衰退が西洋の没落を招いたとの指摘はややわかりにくい。日本は問題なくやってこられた。


「まさに日本のような国は痛みが少ないと思うが、宗教の喪失は常に問題だ。勇気や名誉、真実の尊重などの価値観を人々に植え付け、国や社会を形づくって集団行動を可能にするからだ。そこに宗教の種類は関係なく、仏教と神道と非宗教の儒教が混じった繊細な日本流も同じだ」

「プロテスタント主義が特別なのは聖書を読むための教育の重視が識字率を高め、英国、ドイツや北欧を中心に西洋の発展を促した点だ。その衰退で社会がまとまりを失っただけでなく、人々の知性も低下させた」


「(南欧で主流の)カトリックは洗礼で人は救われると教えるが、プロテスタント主義には誰が救われるかは神が事前に定めているとする『予定説』がある。英国やその影響を受けた米国で経済格差が容認されやすい一因だ。貧困は神に救われない人の定めとの考えにもつながり、その意識が残る米社会の不幸に拍車をかけている」



歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏

――トランプ支持者にはキリスト教右派の人々も多い。


「彼らの宗教現象にプロテスタント主義の価値観は見いだせない。真実の否定、科学への懐疑、金持ち礼賛の姿勢などは、むしろプロテスタント主義の逆行といえる」


「皮肉にも今の状況はプロテスタント主義の成功の帰結だ。皆が読み書きを学んだまではいいが、中等教育、高等教育が普及すると近代民主主義の基盤だった平等意識が損なわれた。社会の分断と階層化で優越感を抱くエリートが生まれ、その反動としてのポピュリズムが湧き起こった」



――日本でも移民への反感が増している。


「日本の問題は完璧主義だ。江戸時代の日本は完璧から遠く、逸脱者にも逸脱行為にも寛容だった。社会の完璧さが境地に達し、それゆえに少子化も進んだ局面で、不完全さの極みである移民を受け入れざるを得ない日本には同情する」


「ただ経済の維持には移民は避けられない。問題がないふりをせず日本に合う形で受け入れるしかない。多少の無秩序は世の常だ。この部屋のようにね」

――グローバルサウスの国々でロシアのソフトパワーが増しているとあなたは指摘している。


「欧米は植民地時代と近年のグローバル化による『新植民地時代』を通じ脅威になった。それにロシアが(ウクライナ戦争を通じて)ノーを突きつけ世界の主流派の圧力を阻む盾となった。ロシアの多極主義的な志向も新興国と共鳴した。9月に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席、ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相が一堂に会し写真におさまったのは世界の転換点だ」


「日本は明治時代、新興国として初めて西洋に対抗した。うまくいきすぎて西洋の植民地主義に染まり大戦に巻き込まれたが、多極化した世界で日本には特別な地位がある。それを生かす方策を真剣に考えるときだ」


――中国という隣国がある以上、米国との強い関係は断ちにくい。


「人口が急減する中国への過度な心配は不要だ。ともに人口が減る日中が通常戦争に備えるのは愚かだ。紛争に巻き込まれるのを避けるなら核の保有が有効だ。平和への唯一の賢い投資で、米軍には理解を示す幹部もいる。中国も沖縄からの米軍撤退を歓迎するかもしれない」


Emmanuel Todd フランスの歴史人口学者・家族人類学者。人口動態や家族構成の知識に基づく挑発的な文明論や地政学の論考で知られ、ソ連崩壊を予言した「最後の転落」をはじめ多くの世界的ベストセラーを著している。1951年生まれ。近著は「西洋の敗北」(2024年)

インタビュアーから 多数意見疑う知の巨人

着古したセーターとジーパン。パリ市内の自宅で迎えてくれた「知の巨人」は飾らないユーモアの人だった。ソ連崩壊を予言した半世紀前の著書に水を向けると「おかげで予言者の資格を得て、たわ言も聞いてもらえる」と笑う。その後も08年の金融危機や米覇権の後退、英国の欧州連合(EU)離脱を見通した。


物議を醸す発言もいとわない。ウクライナ戦争で西側はロシアに負けると主張し「親ロシア」と批判されたが、インタビューでは反ロシア感情に染まった欧州知識人の付和雷同を、一斉に同じ方向に泳ぐ「小魚」にたとえて批判した。日本の事情を熟知しつつ、その核保有も主張する。


そこには多数意見を疑うフランスの知的伝統と、対米警戒や核保有による自立を説くドゴール主義者の顔ものぞくが、それだけでないことは実績が示す。「たわ言」とは聞き流せない。


私は、アメリカ ・ロシアの帝国主義支配から逃れ自由国民国家へ世界の人々の 希望となる解放の戦いがウクライナの人々が戦っていると思っています。

エマヌエル・トッド氏の発言の中でロシアが勝利するとあるが、寧ろ逆にウクライナが勝利することを信じている私には弱者が主のみ前に正しいなら常に勝利する歴史に準じロシアの勝利に同意できません。

白由のためには核兵器(他者への大いなる威し)が必要である認識にも否定します。

聖書にあるように、日々の生活を 善き隣人と手をとり合って励ましあい共に座し清い祈りを重ねて知恵と平和を行う勇気を持ち続け暮らすことによって「民主主義社会」ははるかに核を凌ぐ兵器を手にしている事をウクライナの人々の戦いに見ることができる。

日本に喜らすわたしたちも自由と平和を愛する人々と連体する祈りを 決っして絶やすことは無い。


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